■シンポジウム3 平和をつくる女性パワー
つながろう女性のイニシアティブ
2008年5月5日 午後1:00~3:30
コンベンションB
シンポジウムは、秋林こずえさん(婦人国際自由連盟副会長)のコーディネートで行われ、800人の参加者のうち女性が多数だった。
コーラ・ワイスさん(ハーグ平和アピール)は、「特に男性諸君に歓迎の意をあらわしたい」と始めた。国連安全保障理事会安保理決議1325について「8年前、世界の女性団体が一同に集まって国連安保理に対し決議案を提出した。国連の中でもっとも重要な、『女性・平和・安全保障』という決議、安保理決議1325である。国連におけるあらゆる意思決定に、女性が参加しなければならない、その会議に女性が参加していなければ、合法的な会議ではないということが、国際法に保障された。 女性の参加(participation)暴力の防止(prevention)、暴力からの保護(protect)の、3つのPで始まる決議案はhttp://www.peacewomen.org/で、日本語でも読むことができます。この決議はもっとも強力な手段です。使ってください。これによって女性の経験を発言にし、決定の場に反映することができる」と力強く話した。
その後、8人のパネリストが自らの経験から平和を創るために何をすべきかを話した。
アン・ライトさん(元アメリカ陸軍大佐、外交官)はイラク戦争に反対して職を辞した女性。「最も危惧しているのは、米軍が配備されている国々の女性たちに対する米兵のレイプや性暴力についてである」と話した。そして沖縄、広島、でのレイプ事件、イラクでのレイプ殺害事件に言及。
「アフガニスタンやイラクに派兵されていた米軍部隊の近くに住む女性たちには米兵が戦場経験によるPTSDから突然の怒りや攻撃的行為、レイプが行う可能性があると警告を受けるべきである。また米軍に入隊する女性にも、陸軍に勧誘された女性のうち3割~5割が性暴力を受けているという事実を事前に警告を与えるべきである。軍指導者が性暴力防止を優先課題としてとりくみ、加害兵士の適正な処罰と被害者のケアとサポートを保障すべきだ」と話した。
エレン・ウッズワースさん(婦人国際平和自由連盟、カナダ)は、「貧困や暴力、ホームレスなど多様な問題と平和を関連づけながら平和の活動を創りあげていくべきだ」とした。「2006年6月にバンクーバーで開催された世界平和フォーラムでも女性たちは重要な役割を果たした。カナダには、世界女性行進という行動や、『怒れるおばあちゃんたち』というグループがあり、アフリカのおばあさんたちともつながっている。貧困や暴力、女性に対する暴力、ホームレス、住宅、保健衛生、人種差別という問題と平和を関連づけなかがら平和のための活動を創りあげていくことが大切である。軍事費に莫大なお金が注ぎこまれていることを知れば、貧しい人々が行動しようとするだろう。憲法9条は国家が戦争を起こすことを止めるために世界中で用いることができる優れたモデルだ」と話した。
フローレンス・ンパエイさん(ナイロビ平和イニシアティブ、ケニア)は日常的にも女性が不利な立場に置かれているために紛争下ではさらに不利な立場に置かれる、と話したあと、昨年12月のケニアの選挙後の紛争における女性たちの平和構築のための介入について話した。「女性たちは高度な意思決定のレベルから草の根のレベルまで活動した。女性たちは平和交渉の場に関与し、状況を分析、2大政党へ勧告、テレビやメディアに出て対話による解決を訴え、女性会議として実力者に会い、対話にすべての当事者が参加するようにとよびかけた。政治の当局に対しても仲介の高官に対しても、女性の参加を求めた。 また女性を組織し、人道的援助を行い、国内避難民キャンプを訪問した。年長者を動員し、暴力と物質的破壊を止めることを訴えた。草の根で食料支援をし、病院に行けない人へのケア、トラウマのカウンセリング、国内難民キャンプを訪問し、女性のニーズが満たされるように。長老に対しても働きかけた」と具体的な活動を語った。
丁京蘭(チョン・ギョンラン)さん(平和を創る女性たち、韓国)は、朝鮮半島の平和を実現するために行っている北朝鮮との交流や援助、戦争に反対する活動について話した。また、李明博・新大統領が男女平等省と統一省を廃止しようとしたことに対し、反対運動を展開したと言及。
そして、「韓国の女性たちとして、朝鮮半島と北東アジアに平和と共存を実現するために北東アジア各国政府に対し、共存と協力にもとづく平和政策を発展させること、朝鮮半島の非核化と停戦協定を平和協定に変えること、朝鮮半島と北東アジアにおける軍縮と軍事予算を社会福祉や教育分野に転換すること、北東アジアにおける平和構築プロセスに女性の参加を保障すること、日米の両政府に対し、政策決定プロセスに女性の参加を保障すること、日米の女性たちが韓国と朝鮮の女性たちの間の和解と協力を支援することを求める」と話した。
高里鈴代さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会、沖縄)は、「憲法9条、24条を掲げ、真の安全平等平和な社会に女性の力を」と話した。「沖縄では戦後からずっと米兵による性暴力・人権侵害が続き、北京世界女性会議において、紛争化における女性の暴力と直結して外国軍隊の長期駐留下における女性への暴力を訴えた。その北京会議の最中に沖縄で米兵による少女への性暴力事件が起こった。すぐに女性たちは『基地・軍隊を許さない行動する女たちの会』を結成し、『強姦救援センター・沖縄』を設立した。沖縄は凄惨な地上戦の上に27年間も米軍支配下に置かれ、復帰後も米軍基地が存続し沖縄に集中配備されている。2005年5月からは米軍再編計画を合意し、沖縄の負担軽減というがそれは日米軍事一体化だった。こんな中で米海兵隊による女子中学生性暴力事件がおきた。2007年9月には米軍基地を抱える国や地域の女性たち80人がサンフランシスコにおいて、『軍事主義を許さない国際女性ネットワーク』会議を開催した」と話した。
西野瑠美子さん(戦争と女性への暴力日本ネットワーク共同代表、日本)は「『慰安婦』問題の真の解決は9条の要請である」と話した。そして、「日本軍による性奴隷(「慰安婦」)を強いられたアジア各国の女性たちが尊厳の回復を求めて声を上げてから18年。日本政府に真の謝罪と反省、公的責任をとるように求めている。世界各国も日本政府の公的責任をとるよう求める決議を上げているが日本社会には否定する動きがあとを絶たない。20世紀における戦争と武力紛争下で女性に対する性暴力が繰り返された。平和な社会の実現は過去の過ちと過ちがもたらした苦しみから目を背けないこと、2度と同じ過ちを繰り返さないための意思を形にすることである。平和と正義をあきらめない女性たちの強力なネットワークが、2000年の女性国際戦犯法廷を開かせ、旧ユーゴの紛争下で性暴力被害女性たちが声を上げることにつながった。9条は侵略戦争の反省に立った非戦の誓いである。「慰安婦」問題の真の解決は9条の要請である。その意味で9条の国際化が世界の戦時性暴力の根絶につながることを訴えたい」
高田公子さん(新日本婦人の会、日本)は「草の根の女性たちのがんばりが世論を動かす」と話した。そして「ブッシュ米政権のいいなりになり、『戦争する国つくり』へ日本が加速していること、その中で、日本の国民女性たちは世論の力で9条を守ってきた。平和を欲してやまない日本の女性たちが連なって、国際婦人年連絡会では、33年間『平和なくして平等なし、平等なくして平和無し』の立場で活動をしてきている。平和憲法を擁護すること、核兵器を廃絶し非核3原則を厳守すること、歴史認識をゆがめることに抗議し、「慰安婦」とされた女性たちに謝罪と保障の確立を要求することを行ってきた。私たちがつながることができるのは、アジア諸国への侵略戦争と植民地支配を行った加害国の女性としての痛恨の思いと被曝国の女性であるという思いが根底にある。草の根からの創意あふれる活動を」と訴えた。
このあと、フロアからの質問が出た。中東の女性たちも積極的に活動しているので入れてほしかった、男女平等教育や性教育が平和のために必要だ、安保理決議1325は実際に機能しているのかなど。1325決議に関しては、ンパエイさんが「ケニアではこの決議を活用し、女性が参加することができた」と話しその有効性が感じられた。
最後にそれぞれがひとことメッセージを紙に書いて発表してしめくくった。
会議資料は http://www.ajwrc.org/、http://www.jca.apc.org/femin/、http://www.shinfujin.gr.jp/、http://www.ywca.or.jp/にある。
(文責 赤石千衣子)
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